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禁断のケーキ
じゃらん♪
恋活


わんだふる☆わーるど

 

4/18 第11話 「Stay Gold」

 あまりの出来事に、おれはただ呆然としていた。  人が、人が宙に浮いてる?  そ、そうだ、何処かに仕掛が……  「ないわよ、仕掛なんて」  おれが仕掛を見破ろうと辺りを見回した瞬間、ケイはキッパリとそう言い切った。  人が宙に浮く。その事実を目の前につきつけられても、おれはしばらくの間、信じることが出来なかった。  「しょうがないわね。エル、あなたも飛んでみなさい」  「え?私ですか?」  急に自分に話がふられたために、エルは少し驚いた様子だ。  ……しかし、人が浮いてることには全く疑問を感じていないようだった。  「もしかして、飛び方まで忘れたの?」  ケイが心配そうにそう聞くと、  「そうみたいです」  エルは無邪気にそう返した。  「困ったわね。これじゃ能力を封印されてるのと変わりないじゃない。やっぱり、ぶつけたのはまずかったかしら」  ケイは独り言のようにそう呟いている。  ………ん?ぶつけた?!  「おい、今ぶつけたって言わなかったか?」  「え?そんなこと言ったかしら?」  ケイは軽く流したつもりだろうが、その表情から明らかに動揺していることがわかる。  「いいや、絶対に言った。あんた、何か隠してるだろ」  おれが厳しく追及すると、観念したのかケイはポツポツと話し始めた。  「わかったわよ。最初からちゃんと話すわ。私たちが別の世界から来たってことは前にも言ったわよね。課外授業の為 だってことも。そして、今日が課外授業の初日だったってわけ。初日はだいたいステイ先のマスターと顔を合わせるくら いで済ますのが普通なの」  「?なんだ?そのステイ先やらマスターってのは?」  「そうね。さっきは課外授業って言ったけど、留学の方が感覚的に近いかしら。で、こっちにいる間は生活する場所が 必要じゃない?その生活する場所っていうのがステイ先。まあ、平たく言えばあなたの家ってことよ」  「別にこの家はおれのものってわけじゃないんだが……」  そんなおれの軽いツッコミは気にも止めずに、ケイは続けた。  
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4/21 第12話 「Strike!!」

   「それが、エルってとってもシャイで、なかなかあなたに声をかけきれなかったの。だから私が背中を押してやったん だけど……」  ケイはふぅと軽くため息をついた。  「まさか、急降下するとはね」  ………一体、どんな風に押したんだ?  ん?待てよ。  「じゃあ、おれとこの娘がぶつかったのは、あんたのせいってことか?」  「まあ、そうとも言えるわね」  えらくあっさりと言ってくれる。  「それじゃあ、記憶喪失になったのも……」  「おそらく、ぶつかったせいでしょうね」  「この世界に来る時に忘れるとかそういうのじゃなくてか?」  「当たり前よ。じゃなかったら、どうして私があなたにこんなこと話せると思う?」  確かに。それもそうだ。  「あんたら、この世界の人間に見つかったらマズイとかそういうのはないのか?」  おれは、知らぬ間にケイのペースにすっかりはまっていた。  最初は現実味の薄かったお伽話も、今では身近なものに感じる。  だから、こういった疑問が生まれたのだろう。  「ああ、そのことなら大丈夫よ」  「大丈夫って………パニックになったりしないのか?」  「氷上君って意外と心配性なのね。でも、安心してていいわよ。私たちの正体、別に隠してるわけじゃないんだけど、 とりあえず、ステイ先のマスター以外には明かさないことにしてるのよ。説明するのも面倒くさいしね。それに、普通に 暮らすぶんにはこっちの人間と私たちって何も変わらないから、ほとんど気づかれることもないのよ」  「でもよ、やっぱ気づくやつとかいるんじゃねーか?そんな時はどうすんだ?」  「まあ、確かに気づく人もたまにいるけど……でも、そういう人たちって、だいたい私達の存在を素直に受け止めてく れるもの。そう、あなたみたいにね」  そう言ってケイはおれにウインクを投げかけてきた。  
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4/22 第13話 「Costume Play」

   「おれみたいに?!」  「そう。氷上君、あなた最初にエルを見た時、どんな風に感じた?」  「え?どんな風って言われても………あんときゃ、いきなりぶつかってこられて、気が動転してたから」  「でも、あなたはエルに優しくしてくれたわ」  「そりゃ、女の子には優しくしろっていっつもじいちゃんに言われてたからな」  もう死んでしまったが、じいちゃんはおれに色んなことを教えてくれた。  おれは今でもじいちゃんのことを尊敬している。  まあ、多少、いや、かなりスケベではあったが……  「そう。でも、普通の人はエルの格好を見たらちょっとひくわ。あんな格好をしていて、しかも羽根までついてるん だから」  そう言って、ケイはエルのほうに視線を向ける。  エルは不思議そうにケイを見つめ返した。  ん?  「そういや、さっき、普通に暮らすぶんにはこっちの人間と何も変わらないとか言ってたよな?」  「ええ」  「じゃあ、なんであんたらわざわざそんな目立つ格好してるんだ?」  「ファッションよ」  「ふぁっしょん?!」  あまりの驚きに、おれは平仮名で叫んでしまった。  「そう。私たちの世界ではね、今、この世界の日本の2次元の世界、つまりマンガやアニメやゲームといったものが 物凄く流行ってるの」  なんと。  日本の2次元文化は海外だけでなく、別世界をも席巻していたとは……  「じゃあ、もしかして、コスプレってやつか?」  「そうよ。わたしたちの世界ではコスプレは既に一流のファッションとして認められているの」  「だからって、わざわざその格好で来なくても……目立ちすぎるぞ」  「大丈夫よ。私たちは姿を消すことも出来るんだから。ほら、こんな風に」  そう言うと、ケイの翼がいきなり大きくなりはじめた。  その翼はケイの全身を包み、しばらくしてゆっくりと翼が開かれると、そこにケイの姿はなかった。  その翼も、一枚の羽根を残してまもなく消えた。  「ね?」  姿は見えないもののその艶っぽい声はまさしくケイのものだ。  
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5/4 第14話 「Angel Maker」

   「すご〜い!!!」  「ぬぉっ?!」  いきなり発せられた大きな声に、おれはまるで吉本新喜劇かのようなベタなコケをしてしまった。  格好悪ぅ〜。  声の主はもちろんエルだ。  「あの人、消えちゃいましたよね?ね?」  「ああ、そうだな」  エルはいつのまにかおれの隣にいて、おれの袖をおもいっきり上下に振っている。  それはなんだか犬チックな動作だった。  ん?そういや、ケイが浮いてた時はこんなに驚いたりしなかったよな。  どっちも同じ位不思議なことだと思うんだが……  まったくもって謎だ。  「エル、あの人はないでしょ、あの人は。ちゃんと『ケイさん』って呼びなさい」  姿を見せぬまま、ケイはそう言った。  「はぁ〜い、わかりました。ケイさん」  「うん。よろしい。まあ、基礎の人格は何も変わってないみたいね。それなら、記憶がなくてもあまり問題ないわ。 いえ、むしろ好都合かも……」  そう言ってケイは瞬間的に姿を現した。  「わっ?!きゅ、急に出てくるなよ。びっくりするだろ!」  ふう、この所驚いてばかりだ。  心臓に悪いぜ、まったく。  「あら、ごめんなさい。それじゃあ、あなたにはこれを渡しておくわ」  「?なんだ、これ」  おれがケイから手渡されたのは、大学ノートサイズの分厚い冊子だった。  表紙には可愛い丸文字で『Angel Maker』と書いてある。  っていうか、どっから出てきたんだ、この本?  ……深く考えるのはよそう。  「まあ、マニュアルみたいなものね」  「マニュアル?」  「そう、本来私の役目はエルとあなたを引き合わせることだけだったんだけど、エルが記憶をなくしちゃったから 緊急の措置をとることにしたの。詳しいことはそれに書いてあるから、後はよろしくね」  「よろしくって……あんた、どっか行くのか」  「行くっていうか、帰るのよ。私の世界へ」  「でもさ、この娘の家庭教師みたいなもんなんだろ?いいのかよ、生徒ほったらかしにして」  「別にほっておくわけじゃないわよ。私たちの世界からでも、こっちの世界のことは見えるもの。それに、あなた がエルを襲ったりしないようにちゃんと見張ってるから、変な気は起こさないように!」  おれにびしっと指をつきつけて、ケイは言った。  「誰がそんな……」  そこまで言いかけて、おれはまだ隣にたたずんでいたエルの横顔をちらっと見た。  ………やっぱ、無茶苦茶かわいい〜。近くで見るとなおさらだ。  そういや、おれにはあのじいさんの血が流れてるんだ。  う〜ん、自信なくなってきたぞ。  「……怪しいわね。まあ、君にはそんな甲斐性なんてなさそうだけど」  うっ、そういやそうだった。  おれは女の子とつき合ったことなど一度もなかったんだ。  本当にあのじいさんの血をひいてるのか、おれ。  「……君って本当にわかりやすいわね。まあ、どっちにしろ君を信じるしかないんだけど。じゃあ、エルをよろしくね」  「……ああ。頑張ってみる」  何をどう頑張るかはいまだにわからないが。  「エル。ちゃんとマスターの言うことを聞くのよ」  「わかりました、ケイさん」  笑顔で答えるエル。  しっかし、本当にわかったのかどうかは不明だ。  「それじゃあ、また会う日まで。アディオ〜ス!」  何故かスペイン語(だったか?)の別れの言葉を残して、ケイは玄関から去っていった。  さて、これからどうするか。  よし、まずはケイが残していったマニュアルとやらを読んでみるとしよう。  
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6/2 第15話 「Reading I」

   おれはソファーに腰をおろし、ゆっくりと最初のページを開こうとして、右手を動かした。  すると、何かに触れたような感触があった。  ふと、隣に目をやると、いつの間にかエルがちょこんと座っていた。  「エ、エルもこれ読みたいのか?」  つとめて冷静にいったつもりだが、多少声がうわずっていたかもしれない。  や、やべー。ドキドキしてるよ、おれ。  「はい」  エルは無邪気な笑顔をおれに向けてくる。  いかん、このままでは何しでかすかわからんから、とりあえずこの本でも読んで気を紛らそう。  それに、これを読んでるうちに、エルも自分のことを思い出すかもしれないしな。  そしておれはページをめくった。  「え〜と、なになに?『第一章 僕にこの手を汚せというのか』?なんだこれは?」  わけのわからないままおれは次のページをめくる。  するとそこには……  「『嘘。』って、なんなんだよ、これは!」  ったく、悪ふざけがすぎるぜ。  もしかして、これってケイが自分で作ったものじゃないだろうな。  いや、そうに違いない。  あのねーちゃんのやりそうなことだ。  気を取り直して、おれはさらにページをめくった。  「『真・第一章 平行世界と繋がりの扉』か。今度はまともそうだ」  「あの〜」  エルがのんびりとした声で呼びかけてきた。  う〜ん、声も可愛い。  「何?」  エルの方に振り向くおれ。  「わたし、なんだか字が読めないみたいなんで、すみませんけど声にだして読んでいただけますか?」  「ああ、いいぜ」  そして再びその本に目を落とした。  ……え?  字が読めない?  確かにこの本は日本語で書かれてるから、違う世界の住人であるエルが読めないのは当たり前かもしれない。  けど、ケイは表札にあるおれの名前を読んだよな?  それに、日本のマンガやゲームが流行ってるっていってたし……  おまけに、エルだって日本語喋ってるじゃないか。  一体、どうなってんだ?     
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6/5 第16話 「Reading II」

   「あの、どうかしたんですか?」  心配そうにエルが聞いてきた。  「やっぱり、嫌なんでしょうか……」  エルが哀しそうげな瞳でおれを見つめる。う〜ん、この表情もなかなか……って、見とれてる場合じゃねーって。  「あ、いや、そういうわけじゃないんだ。今から読んでやるよ」  そうだ。  あれこれ考えててもしかたない。  どうせおれなんかにわかるはずもねーし。  それに、もしかしたらこの本に書いてあるかもしれないしな。  「それじゃあ、読むぞ。『真・第一章 平行世界と繋がりの扉 その1 平行世界とは?』」  おれは、ゆっくりとページをめくった。  ちらっとエルを見ると、わくわくした表情で続きを待っているのがわかる。なんだか、紙芝居の先を待つ子供みたいだ。  エルの期待に応えるため、おれは少しもったいつけて続きを読み始めた。  「『平行世界。つまり、決して交わることのない2つの世界。互いの存在は長い間知られることなく、何も干渉しあわない で時間だけが過ぎていった』……なんか、歴史っぽいことがかいてあるようだな」  「歴史ですか?」  「ああ。『しかし、私たちはある時偶然にも気づいてしまったのだ。私たちに似た、しかし決して私たちと同じではない生 物が生活する世界の存在に。』おいおい、この世界って偶然みつかったのかよ。もうちょっとドラマティックに見つけてくれよ」  「ドラマティック?」  「そう、例えば…………」  やべ、思いつかね〜。無茶苦茶格好悪いが、なんとかごまかすしかない。  「ま、まあいいや。続き読むぞ」  「はい」  ふう、決まりは悪いが何とかごまかせたようだ。でも、こんなにあっさりされると期待されてなかったようで少し寂しい。  「……『私たちは、始めその世界を観察するだけだった。それは、実に興味深い研究でもあった。その世界を構成する物質は 私たちの世界と変わらないにも関わらず、その世界で生活する私たちと似た姿をした生物、後にそれは人間と呼ばれていること がわかるが、その人間の生活様式は、私たちとは全く異なっていたのだ。そして、その研究に携わっていた者たちは、ある欲求 に駆られ始めていた。そう、その世界を直に体験したいという欲求に…… その2へ』………これって、最近の話なのか?」  「さあ」  まあ、エルにわかるはずもないな。  まだ何も思い出してないみたいだし。  おれはページをめくり、続きを読み始めた。  
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6/15 第17話 「Reading III」

   「『その2 2つの世界 研究者たちは必死に探り始めた。そう、この世界と向こうの世界をつなぐ方法を』………で、結局 その方法ってのが見つかったんだよな」  「そうなんですか?」  エルが不思議そうにおれに聞いてきた。  「ああ、じゃなかったらおれがエルやケイに会えるわけねーだろ。じゃあ、続き読むぞ。『そして、彼らはついに見つけた、 2つの世界を結ぶ扉を』……ほらな」  「本当だ。すごいですね」  「え、いや、はははは」  あまり誉められることに慣れていないおれは、照れ隠しにとりあえず笑ってみた。  「………ん?」  ページをめくったおれは一瞬、自分の目を疑った。  「何語だ、これは?」  そう、そこには日本語とも英語ともサンスクリットともハングルとも違うが、確かに文字だとわかる記号が羅列してあった。  「もしかして、エルの世界の言葉じゃないのか?」  「はい、多分そうかも」  「読める?」  「いいえ」  はじけるような笑顔で答えるエル。  ここまできっぱりと言い切られると、逆にすがすがしい。  「………しかたない。ここはとばそう」  そして、おれはパラパラとページをめくっていった。  「………………おっ、ここからまた日本語だ」   そこには、『第二章 地獄の鎮魂歌編』とそのタイトルと全然あってない可愛い文字で書いてあった。  「地獄って……やっぱ、悪魔かなんかなのか?」  おれはエルには聞こえないくらいの小さな声で呟いた。  どうやら、エルにおれの声は届かなかったらしい。  少なくとも、地獄耳ではなさそうだ。  そして、ゆっくりとページをめくると……  『嘘。 パート2』の文字がおれの目に飛び込んできた。  「ちっくしょう!絶対遊んでやがる!」  「きゃっ?!」  「あ、ゴメン」  おれが急に大声を出したために、エルがびっくりしたようだ。  いかんいかん。  もう少し落ち着かなくては。  おれは気を取り直して、再びゆっくりとページをめくった。  
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6/30 第18話 「Reading IV」

   「『真・第二章 教育制度』……う〜ん、ここはしっかり読まなくちゃいけないようだな」  ケイからも頼まれたことだし。  「『その1 相互世界の差異について』……なんだ?この小難しいタイトルは」  まあ、読んでいけばそのうちわかるだろう。  「なになに、『我々はもともと集団での共同生活の場というものを持たずに育ってきた。しかし、あちらの世界には「学校」 と呼ばれる、共同で勉強や運動を行う施設が整えられていた』」  「学校ってなんですか?」  興味深々といった顔で、エルが聞いてきた。  「エルも明日から通うんだから、明日になれば…………ん?そういえば……」  そうだ。  エルも明日から学校へ通うんだ。  けど、制服とか、勉強道具とかはどうするんだ?  まさかおれのやつを貸すってわけにもいかんだろうし。    ピンポ〜ン♪  突然部屋に響いたインターホンの音で、おれの思考は断された。
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6/30 第19話 「intermission」

   「ちわ〜っす、宅配便で〜す」  インターホンの向こうから、三河屋のさぶちゃんみたいな声が聞こえてきた。  うちの両親が旅先から何か送ってきたのか?  いや、今日出発したばかりだし、まだ到着してもいないだろう。  「氷上さ〜ん、いらっしゃいますか〜」  「は〜い、今いきます」  おれは、礼儀正しくそう返事をした。  「エル、ちょっとこっちに来てくれ」  「はい」  さすがに、宅配のにーちゃんにエルを見せるわけにもいかないだろう。  おれは、エルを玄関からは見えない位置に移動させた。  「ちょっと、ここで待っててくれないか」  「わかりました」  う〜ん、素直な娘だな。  おれは、ちゃっちゃと用事を済ますべく、印鑑をもって玄関へといった。  「お待たせしました」  「じゃあ、ここにハンコお願いしやす」  「はい」  「はい、じゃあ、これ。どうもありがとうございやした〜」  そう言って宅配のにーちゃんは荷物を残し立ち去った。  ………しっかし。  なんだ、この荷物の量は?  半端じゃねーぞ。  しかし、量の割には大した重さじゃなかったから、簡単に全部中に運び込むことができた。  そこでおれは初めてそのことに気づいた。  「……なんだこれ?差出人の名前がねーぞ?」  怪しい。  実に怪しい。  まあ、別に爆弾とか入ってるわけじゃねーだろうが、ここは慎重に………  「わぁ、なんですか、これ?」  「お、おい、ちょっと待て!」  「え?」  しかし、時すでに遅し、すでにエルはその箱の封を破いていた。やれやれ。  「あの、なにかいけなかったのでしょうか?」  「………もう、いい。それより、ちょっとそれ見せてくれないか」  「はい、わかりました」  そういって、エルがその箱から取り出したもの。それは………  「制服?!」  そう、それはうちの学校の女子が着ている制服だった。  「なんでそんなもんが………」  おれは他の箱も次々と開けていった。  そこには、様々な女物の洋服が入っていた。  もしかして……  「これ送ってきたの、あのねーちゃんか?」  まあ、そうとしか考えられない。  ちくしょう、本気で学校に通わせる気なんだな。  にしても、一週間しかこっちにいないって言ってた割には、服、多すぎやしねーか?  女ってわかんねー。  まあ、それはそれとして……  「エル、荷物運ぶから手伝ってくれ」  「わかりました」  おれはこの洋服を姉貴の部屋に入れることにした。  女子大生の姉貴はめったにうちに帰って来ないから、別にここを使っても文句はねーだろう。  もっとも、姉貴はエル以上にのほほんとしてるから、知られたとしても別に怒ったりはしないだろう。  おれは、いまだにあの姉貴が高校時代、バトミントンでインターハイに出場したというのが信じられない。  おれよりスポーツだめそうな顔してるのに。  「よし、これで最後か」  「はい」  荷物を全部運び終えたおれたちは、再び居間へと戻ってきた。  
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6/30 第20話 「Reading V」

    「さてと、どこまで読んでたっけ?」  「え〜と、確か20ページぐらいだったような気がします」  「そうか」  おれはとりあえずエルのいうとおり、パラパラと20ページ目あたりを開いた。  「………お、これだこれ。教育だどうのとかいう話だったな」  「そうですね」  「う〜ん、これを全部読むのは大変そうだな。はしょって読んでもいいか?」  「はしょって?」  「ああ。つまり、重要そうなとこしか読まないってことだ」  「でも、どかが重要かわかるんですか?」  うっ、痛いところをついてくる。  「ま、まあ、なんとなくはわかるさ。それに、わからないことがあったらまたこれを読めばいいんだ」  「それもそうですね」  一応、納得してくれたみたいだ。  本当に納得したのかどうかはわからんが。  そしておれは、マニュアルの斜め読みを始めた。  …………………………………ふぅ。  読み終えた時には、さすがにちょっと疲れていた。  しかし、結構いろんなことがわかった。  まず、エルたち向こうの人間がこっちの世界にくるためには、パスポートみたいなもんがいるということ。  この世界に来るのは、どうやら女性に限られているらしいこと。  この世界の学校での生活が、向こうの世界の女性の必修科目であるらしいこと。  そして……  「『……なお、その世界に強い愛着を抱いた者は、その世界への永住を許可する』……って、こっち側の人間になる ってことか?!」  ケイの言ってた選択ってのは、このことだったのだろうか。  「ん?まだ続きがあるな。なになに、『しかし、その場合、この世界での記憶や、それまでその世界で過ごした記憶 を全て忘れ、全くの別人として暮らしていかなければならない』………これって……」  「?どうしたんですか?」  エルはやはり何もわかっていないらしい。  自分が記憶を取り戻したとしても、この世界に残ることを選んだ場合、再び全てを忘れるってことに気づいていない。  これは、けっこう残酷な話なんじゃないのか?  おれは唐突にエルが可哀相に思えてきた。  エルが欲しがってるのは憐れみなんかじゃないことはわかってる。  しかし、そんな不条理なことってあるか?  そしておれは、いつのまにかエルをきつく抱きしめていた。   

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