月の囁く夜だから

 時刻は夜。  ここ水瀬家のベランダでは一人娘である名雪が何やら口づさんでいる。  「あいあむごっ ちゃ〜〜いる♪」  訂正。  大声で叫んでいる。  「おい、名雪そのへんでやめておけ」  名雪を制止したこの少年は相沢祐一。  名雪の従兄弟にあたり、今はわけあって水瀬家に居候している。  「え?なんで?」  「最近は何かとうるさいんだよ」  「??」  「それに近所迷惑だろうが」  「そんなことないよ。ご近所さんから苦情きたことないもの」  「じゃあ、俺がはじめての苦情を述べてやる。迷惑だからやめてくれ」  「え?祐一ってご近所さんだったの?」  「ああ。しかも隣りの部屋という最も近い場所だ」  「う〜ん、そっか。じゃあ祐一も一緒に歌おう。これで一件落着だね♪」  「おい、どうしてそうなる?」  「てをつ〜な〜いだら〜いってみよ〜〜〜♪」  「聞いちゃいねえな」  「ふら〜いみ〜とぅ〜ざむ〜〜ん♪」  「しかもメドレーかよ」  「ど〜こ〜のだ〜れだ〜かし〜らな〜いけれど〜♪」  「だ〜れもがみ〜んな……はっ、あやうく乗せられるところだったぜ」  「むう、残念」  「どうした、もうネタ切れか?」  「そんなことないよ。あ〜あ〜 ごぜんご〜じ〜 じかんはふたりをあさにして〜〜♪」  「古いぞ名雪」  「う〜まん いいかけてやめたくちづけのあとで〜♪」  「マイナーだぞ名雪」  「なのは〜なばたけ〜に いりひうすれ〜♪」  「懐かしいぞ名雪」  結局の所、二人して近所迷惑な名雪と祐一であった。
お・し・ま・い♪