AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する
Rainbow
雨上がりの空に、虹が浮かんでいた。
さっきまでは、せっかく持って来た新しい傘が必要なくなったことにちょっと沈んでいたけど、もうそんなことはどうで
もいい。
僕は、子供の頃から虹が好きだった。
虹に限らず、鮮やかな色彩を放つものに目を奪われる。
だからだろうか、彼女につい目がいってしまうのは。
「あ、佐伯さん……」
帰り道、僕はいつものようにその場所でその彼女、佐伯さんを見かけた。
彼女は僕のクラスメートだけど、そんなに親しいわけではない。
「あら?結城くんも今帰りなの」
いつもはその場所に佇む佐伯さんの姿を眺めるだけで立ち去っていたのだけれど、今日はなぜか話しかけてみようと思
った。
そして、聞いてみたかったんだ。
「いつも、この場所にいるよね。やっぱり、あれを見てるの?」
そう言って僕は視線を上げる。
そこには、どういう原理かわからないけど、ビルとビルの隙間から淡い光が漏れていて、まるで楽園への道を示してい
るかのように思えた。
「うん。綺麗だよね……」
そう言う佐伯さんの横顔も、その光りの加減もあってか、とても魅力的だった。
彼女が放つ色は、あの光りに似てとても優しい。
「そうだね。でも、不思議だよね。この時間、この場所じゃないとあの光景は見れないなんてさ」
「え、そうなの?」
驚いたことに、彼女はそのことを知らなかったようだ。
「そうなんだ。だから、この場所は僕の秘密の場所だったんだけど……」
「ご、ごめんなさい」
「謝ることないよ。別に僕が独り占めするつもりもなかったし」
「でも、大切な場所なんじゃ……」
「大切?そう、そうかもね」
「じゃあ、やっぱり……」
「ううん。ここは、佐伯さんに発見されて大切な場所になったんだ」
「え?」
「つまり、これからは僕と佐伯さんの秘密の場所ってわけさ」
わざと佐伯さんの視線を外してそう答えた。
だって、彼女の視線はあまりに眩しいから。
ビルの間からさす光りは、もうすぐその幻想を解き放ち現実に埋もれようとしている。
「じゃあ、明日もこの場所に来てもいい?」
遠慮がちに佐伯さんが僕に聞いてくる。
「もちろん。といっても、どうせ帰り道なんでしょ?」
僕は視線を彼女に戻す。
「あはは。まあ、そうなんだけどね」
照れた仕草がたまらなく可愛い。
光りは、すでに消えている。
けれど、僕を照らす彼女の光りは、鮮やかに僕を染め上げていくようだった。
そう、まるで雨上がりの空に浮かんだ、あの虹のように。
<終幕>
