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昔々、小さな村に寂しがりやの男の子と、目立ちたがりやの女の子が住んでいました。
男の子は女の子が好きでした。
けれど、その女の子はいつも人に囲まれていて、内気で恥ずかしがりやの男の子には声をかける勇気がありませんでした。
女の子は男の子が好きでした。
けれど、その男の子はいつもひとりぼっちで、見栄っ張りでプライドの高い女の子には声をかける勇気がありませんでした。
やがて、男の子は少年に、女の子は少女に成長しました。
少年はますます少女のことを好きになっていました。
けれど、少女の周りの人の輪はさらに大きくなり、少年の接触を妨げるかのようでした。
それでも、その輪の外から少年は少女を見続けていました。
しかし、そのことを少女は知りません。
少女はますます少年のことを好きになっていました。
けれど、少年はますます孤立していて、まるで、少女の手を拒絶しているかのようでした。
それでも、少女の視線は、少年だけを映していました。
しかし、そのことを少年は知りません。
お互いに足りないもの。
それは、ほんのちょっとの偶然と、ひとかけらの勇気。
それさえあれば、二人は自然に近づくことが出来るのに、なかなかその機会にめぐり合えません。
そして、そんな二人を見かねた恋の女神様が、二人に素敵な偶然をプレゼントしました。
その日は七夕。
彦星と織姫が一年に一度だけ会うことを許された特別な日。
空には、天の川が燦然と輝きながら流れています。
少年の願いは今年も同じ。
「どうかあの娘に僕の気持ちが届きますように」
少女の願いは今年も同じ。
「どうかあの人に私の気持ちが届きますように」
短冊に祈りを捧げた少年は、近くの神社のお祭りに出かけることにしました。
お祭りは毎年行われているのですが、行くのは今年が始めてです。
短冊に祈りを捧げた少女は、近くの神社のお祭りに出かけることにしました。
お祭りには毎年友達と行っているのですが、今年は一人で行くことにしていたので誰も誘っていません。
そして……。
「あ」
「あ」
素敵な偶然。
「……こんばんは」
「……こんばんは」
「…………」
「…………」
「…………お祭り、行くの?」
「うん」
そして、
「………………ねえ、一緒に行かない?」
「……いいよ」
ひとかけらの、勇気。
この後この二人がどうなったかって?
それを聞くのは野暮ってものですよ。
恋の女神様は、いつでも恋する人々を見守って、そして幸せを運んでくださるのですから……
<終幕>
