AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する
春紫苑
気がつくと、雨はいつの間にかあがっていた。
「おい、雄二。さっさと帰ろうぜ」
振り返り声をかける。
しかし、その先には誰の姿もなかった。
「あ…」
いつからだろう、俺とあいつの間に溝が出来たのは。
雄二とは、幼稚園からの付き合いで、小さい頃から一緒に馬鹿やってきた。
小学校の時、いつも遅刻ぎりぎりでお互い邪魔しあいながら競争した。
中学校の時、俺が遊びで書いたラブレターをあいつの下駄箱に入れたら、真面目な顔で校舎裏まで来てたっけ。
普通気づくよな、俺の字だって。
あいつの本気で怒った顔、その時はじめて見たよ。
そして今年、高校に入っても俺と雄二のそんな関係は相変わらず続いていた。
二人で馬鹿やって、一緒に遊んで、たまに喧嘩もして……
それは、ずっと続いていく、はずだった。
教室の扉を開くと、放課後特有の喧騒が聞こえてきた。
以前の俺なら、その音の波の輪に加わっていた。
けれど今は違う。
とてもそんな気にはなれない。
廊下を歩く俺の足音だけが、やけにはっきりと聞こえてくる。
昇降口で靴を履き替えている時、突然思い出した。
そうだ。
あの日も今日の朝みたいな天気だった。
薄暗い空から大粒の雨。
雄二は、真面目な顔で俺に話しかけてきた。
「お前、人を本気で好きになったことあるか?」
最初、俺は雄二が何の事を言ってるのかわからなかった。
「はぁ、お前好きな娘でも出来たのか?」
「どうなんだ。いいから答えてくれ」
その時の雄二は俺の言葉なんか聞こえてないみたいだった。
その瞳があまりにも真剣に俺を捉えてたんで、俺は………
答えることが出来なかった。
そして俺は逃げたんだ。
雄二の真剣な眼差しから。
答えることの出来なかった自分自身から。
あの時は、そんなこと考えもしなかったけど、今になってやっとわかった。
何も言えなかった俺に背を向けて去っていった雄二の背中が、やけに淋しく見えた理由。
それは、俺よりも早く、自分が先へと進んでしまったことに気づいたからだったのだろう。
校門の外へと足を踏み出す。
雨はすっかりあがっている。
通い慣れた通学路には、あちこちに水溜りができている。
その一つを覗きこみ、俺は自分の顔を映してみる。
この顔は、どんな風に変わっていくのだろう?
俺は、どう変わればいいんだろう?
どういう風に変わりたいと思うんだろう?
ふと顔をあげてみる。
空には、虹が架かっていた。
虹に手をかざしてみる。
もちろん、触れることなんか出来やしない。
けど、それでも必死で手をのばしてみる。
すると、俺の心が呼ぶ声が聞こえた。
急がなくてもいいんだよ、と。
変わらなくてもいいんだよ、と。
そう、そうなんだ。
雄二は先に行ってしまったけれど、決して追いつけない距離じゃない。
今は、一歩引いた位置から雄二を追いかけよう。
いつの日かまた、二人して笑いあえるように。
<終幕>
