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DARK EYE -2nd-
私は急いで車へと戻った。
確か、後部座席にクーラーボックスを積んでいたはずだ。
車に駆け寄り、急いでドアを開ける。
あった。
私は安堵のため息をつく間もなく、手早くクーラーボックスを取り出し、今来た道を急いで戻った。こうしている間にも、
彼女が消えてしまうのではないかと気が気でなかった。
息を切らしながらさっきまでいた場所へと引き返すと、そこには確かに彼女がいた。
私はやっと安心出来た。そして、彼女を抱えあげてみる。
やはり、美しい。
この美しさを一時的にでも暗闇に封じるのは不遜なことに思えたが、やむをえない。彼女と一緒にいるところを他人に見ら
れでもしたら、大変なことになってしまう。
私はクーラーボックスの蓋を開け、そこに彼女を寝かせた。彼女はそれを厭う風もなく、しっくりとその箱に収まった。
まるで、運命の歯車が噛み合うかのように。
それから、数日が過ぎた。
彼女は今、私の部屋のサイドボードの上にある水のない水槽の中でたたずんでいる。
私は2LKのマンションで暮らしている。親は田舎で暮らしていて、もう何年も顔を合わせていない。妻も子もいない。親し
い友人もなく、私を訪ねてくる者など皆無と言っていい。だから、彼女が見つかる心配は、まず、ないだろう。
ただ、自分が何かしらの罪を犯しているだろうことは、十分に承知している。私には特別な存在の彼女も、世間様にはただの
“死体の一部”に過ぎないからだ。
本来ならば真っ先に警察に届けなければならないのだろうが、そんな気は起こらなかった。第一、私は警察が嫌いだ。
そして私は、自分の罪の重さと彼女が何者であるかを確かめるために、図書館へ向かった。
先月、会社をリストラされ、今は失業保険とわずかな預金で暮らす身だ。時間はあり余っている。
図書館に着いた私は、まず始めに法律関係の図書が並んだ書架から、小六法を一冊引き抜き、席に着いた。
自分のことではあるが、妙に落ち着いていられる。この根拠のない安堵感は、やはり、彼女のせいだろか。
と、ページをめくる手を止める。
これか。
刑法 第190条
死体、遺骨、遺髪又ハ棺ニ納メテアル物ヲ損壊シ、遺棄シ、又ハ領得シタ者ハ、三年以下ノ懲役ニ処スル
領得という単語の意味が曖昧なので、一応漢字辞典で調べてみる。
領得ー取って自分の物にすること
まいった。まさにその通りの事を私はしていた。
それにしても、死体遺棄と同等の罪だったとは。
死体遺棄はテレビなどでよく耳にするが、死体領得はほとんど聞いたことがない。まあ、普通は死体を拾って自分の物にしよ
うとする人間などいないということだろう。
さて、これで私の用事は終わったわけではない。
次は彼女の事を調べる番だ。
<続>
