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Birthday Eve
「今日が何の日か覚えてる?」
美沙のその言葉に、悠はため息をつきたくなった。
一体、今日まで何度その言葉を聞いただろう。
そして、聞かれる度に悠はこう答えるしかなかった。
「忘れた」
実際には、忘れようにも覚えてもいないので語弊があるのだが。
しかし、美沙は悠のその言葉を聞いても怒ったりしない。
やっぱり、と一人納得顔で悠に今日という日を説明するのである。
案外、確信犯なのかもしれない。
「今日はね〜、なんと、デート記念日なのです!」
「はぁ?」
そして、美沙の記念日はそのあたりが“記念”なのかがわからないものが多い。
「というわけで、デートしよ、デート♪」
「こんな夜中にか?」
「もち♪」
こんな風に、美沙の記念日は何かのきっかけを作る手段なのだろうということに、悠は最近気づいた。
一種の照れ隠しなのかもしれない。
「わかったよ。外は寒いだろうから、コート着ていくぞ」
「うん」
そして二人は部屋から外へ出る。
「で、何処に行くんだ?」
「そうだね〜、公園まで散歩ってのはどう?」
「っていうか、この時間だと公園くらいしか行くとこないけどな」
「へへ、それもそうだね」
時刻は23:30。
あと半時で日付が変わる。
公園には、いくらもかからずに到着した。
「星綺麗だね〜」
ベンチに座り、星空を眺める。
「ああ」
「オリオン座はどれかな〜?」
美沙が立ち上がり、きょろきょろと夜空を見渡す。
悠もそれにつられて立ち上がり、オリオン座を探す。
「ん?あれじゃねえか?」
「あ、ほんとだ!悠すご〜い!!」
「いや、オリオンくらい誰でも見つけられるって」
子供のようにはしゃぐ美沙を見て苦笑を浮かべる悠。
と、急に悠の体に重力がかかる。
美沙が、悠に背を預けるようにして寄り添っていた。
「ん?どした?」
「ん〜とね。幸せだな〜って」
言って、へへと笑う美沙。
「ああ、そうだな」
腕を美沙の前に回し、軽く抱き寄せる悠。
「温かい♪」
「風邪とかひかれたら、嫌だしな」
なんとなく照れくさそうに話す悠。
「うん♪……あ、そろそろかな?」
そう言って美沙は悠から離れると、公園の中央に備えられた大きな時計台の前に立った。
「よし、ぴったり。さて、ここで再び問題です。今日は何の日でしょう?」
時計の針を確認した美沙はくるっと振り返り、悠に再び笑顔で問い掛けた。
悠は、時計の長針と短針がちょうど重なり合っていることを確認すると美沙の元へとゆっくり近づいていった。
そして、いつも通りではない台詞。
「忘れるわけ、ないだろ」
触れ合う口唇。
夜空を背景に、重なり合う心。
星たちの祝杯を受けながら行われる、神聖な儀式。
「Happy Birthday、美沙」
恋人たちに、永遠の祝福あれ。
<終幕>
