Angel Wing

 「どうして、天使の背中には羽根がついてるの?」  ミリがきく。  「それは、神様がくださったからさ」  ライルが答える。  「どうして、人間には羽根がないの?」  ミリがきく。  「人間は罪を侵したんだ。神様にも許せない程の罪をね」  ライルが答える。  「罪って?」  ミリがきく。  「神様の存在を忘れてしまったことさ」  ライルが答える。  「神様を忘れると、羽根が消えちゃうの?」  ミリがきく。  「そう。人間は本当は僕たちと同じ天使だったんだ。でも、長い月日が流れるうちに神様を疑う者たちが現れた。そいつらは、 自ら羽根をむしり、地に堕ちることを選んだんだ」  ライルが答える。  「どうして、人間には天使のことが見えないの?」  ミリがきく。  「見ようとしないからさ」  ライルが答える。  「どうして、天使には人間が見えるの?」  ミリがきく。  「それが、僕たちの使命だからさ」  ライルが答える。  「使命って?」  ミリがきく。  「人間を見守り、正しき道を歩ませること」  ライルが答える。  「でも、神様は人間を許せなかったんでしょ?」  ミリがきく。  「そう、許せなかった。でも、見捨てたりもしてないんだ。その証拠にほら、ごらんよ、君には僕の姿が見えてるじゃないか。 僕にも、君の背中に翼が見える」  ライルが答える。  「じゃあ、あたしも天使になれる?」  ミリがきく。  「お前は、生まれた時からずっと私の天使だよ」   ミリの父親は、眠っている我が子を抱きあげ、静かにそう呟いた。
<終幕>