Title of mine

 最近、眠れない夜が続く。  梅雨も明け、本格的な熱帯夜が続いている、だとか。  仕事が忙しく、日付が変わってから帰宅する日が続いている、だとか。  原因としてはいくつもの要因が重なっているのだろうが。  それよりも、なによりも。  一番の、核心の、最大の原因はわかりきっている。  大好きな、本当に大好きな彼女を遠ざけたこと。  あの日以来、眠れない夜が続く。  あの日以来、満ち足りない日々が続く。  本当はわかっていた。  そんなことをしても何も変わらないことを。  けれどもあの時は、  彼女の優しさが痛くて、  彼女の微笑みが眩しくて、  彼女の素直さがざらついて、  彼女の存在を認めることすら苦痛で、  一番楽で、一番安易で、一番残酷な方法を選択してしまった。  つまり、逃げ。  彼女の差し出す手を振り払い、孤独に安住の地を求めた。  一人は楽だ。  誰からも、何も求められない。  一人は楽だ。  誰にも、何も求めることはない。  けれども、それは。  何もない空間を何も考えずに見つめているだけの生活。  そこに意味など生まれない。  決して、生きているとは実感できない。  本当は、わかっていた。  だから今も、こうして眠れない夜を過ごしている。  眠れないのは、彼女のことを考えているから。  謝ったら、許してくれるだろうか?  もう一度、必要としてくれるだろうか?  いや、許されなくていい。必要とされなくてもいい。  ただもう一度、彼女に会いたい。  その肌に触れてみたい。  その息を間近で感じていたい。  そんなことを思いながら、今日もまた夜が明けてゆく。  今日こそは、彼女に会おう。  今日こそは、彼女と話そう。  今日こそは、彼女に謝ろう。  もう何度目になるかわからない言葉を胸に刻みこむ。  そして最後に、こう付け足した。  今日こそは、二人で眠れますように。
─fin─